映像を「枠」から解放した先駆者、トニー・アウスラー展の深掘り完結編。森美術館キュレーターの椿玲子さんを迎え、19世紀の「偽の巨人事件」に着想を得た新作や、AI・5G時代の妖精を映す《マシンエルフ》を解説。さらに、パリでの「おばあさんハント」やファッションから現代アートへ至った椿さんの独自のキャリアに迫ります。Guest Profile
- 椿玲子(つばき れいこ)
- 森美術館キュレーター。2002年より森美術館に所属し、「医学と芸術展」「宇宙と芸術展」「レアンドロ・エルリッヒ展」など、数々の話題の展覧会を企画担当
- 現在、虎ノ門ヒルズの文化複合施設「TOKYO NODE」の企画にも携わり、本展「トニー・アウスラー展」のキュレーションを手掛ける
Show Notes
- 森美術館とTOKYO NODEについて
- トニー・アウスラーの出展作品
- 《ホイス・イット・フロム・ザ・ピット》: 1869年に起きた「カーディフの巨人(偽の巨人の化石発掘事件)」をモチーフにした新作
- 《マシンエルフ》: 電子機器に不可欠な「クリスタル(水晶)」と、5Gなどの見えない周波数(妖精=エルフ)を掛け合わせたデジタル・オカルト作品
- 《ユーフォリア》: 1991年発表の作品。人々がテレビ等のメディアを注視し続けてトランス状態に陥る現代社会を30年以上前に余見していた
- 椿さんのキャリアについて
- モード論と現代思想: 大学時代、なぜ人は新しいものを求めるのかという関心からファッションの「モード論」を研究。ボードレール(フランスの詩人)やドゥルーズ(哲学者)の思想を背景に、「今っぽさ」が生まれる構造を探求した
- 篠原資明: 椿さんの指導教官。ウンベルト・エーコの『開かれた作品』の訳者であり、村上隆の博士論文の審査員も務めた美学者
- やなぎみわ: 京都出身の現代美術作家。パリ留学中の椿さんが制作アシスタントを務め、新作のモデルを探すためカフェで「おばあさんハント」を行ったエピソードが語られる
- カルティエ現代美術財団: ジャン・ヌーヴェル設計のガラス張りの建物で知られるパリの現代アート拠点。椿さんはアジア人初のインターンとして展覧会制作を経験した
- 他ジャンルとの「越境」: 2002年に森美術館へ参画。「医学と芸術展」ではダミアン・ハースト、「宇宙と芸術展」ではチームラボなどの現代作家と歴史的資料を融合させ、専門外の人も楽しめる独自の企画術を確立した
- 展覧会・出版情報
プロデューサーの編集後記
- 19世紀の捏造事件から最新のAI映像まで。アウスラーが描く世界は、テクノロジーの進化と私たちの「信じたい」という欲求が表裏一体であることを教えてくれます。
- 椿さんの「モード論」から現代アートへの歩みを聞き、森美術館の展覧会がなぜ「今、見るべきもの」として私たちの心を掴むのか、その秘密が少し解けたような気がしました。
- パリのカフェでの「おばあさんハント」のエピソードは、キュレーターが単なる研究者ではなく、現場で作品を「生み出す」ための泥臭い情熱に溢れた仕事であることを象徴する、最高のハイライトでした。